《スノーダンプラボ》
2022
スノーダンプ、段ボール、映像、他

雪国の生活に必須である除雪道具であるスノーダンプの歴史を振り返りつつ、新たな活用方法を模索するためのラボを開設

越後妻有里山現代美術館MonET企画展/北越雪譜アドベンチャー 参加プロジェクト

スノーダンプのはじまり

昭和36年石川県吉野谷村字中宮の宮村鉄工場が鉄製の雪押しを製作したのがスノーダンプのはじまりとされる。製作したきっかけは、宮村清一郎さんと息子の勝さんが家の周りの除雪をするため便利な道具がないものかと考えたことにあった。
北海道でも同時期の昭和30年代後半に、深川市や、幌加内町、旭川市、留萌市などの各地の鉄工所が、国鉄や土地改良区の土地改良区の依頼によって鉄製の雪押しが製作された。
本州の雪国でコシキが生まれ北海道に渡り、軽い雪用のジョンバや雪箕など環境に合わせて変化していった。そして国鉄の保線区のネットワークもあり、鉄製の雪押しが昭和30年代後半に全国的に発生し、昭和38年の豪雪を機に一般に普及した。
スノーダンプの発生は重い雪の土地と軽い雪の土地での除雪具の発展のリレーがあってこそ生まれたのだ。

スノーダンプ以前

スノーダンプ以前の除雪具は、重い雪を扱うコシキ(コスキ)と軽い雪用のジョンバ、スコップなどが代表的なものであった。その後昭和10年から20年代にかけて、スノーダンプの原型ともいえる木製の雪押し(雪箕)が北海道の国鉄の保線区を中心に開発されていった。

コシキ(コスキ)

一本の木(主にブナ材)から製作されたヘラ状の北陸、東北地方で最も伝統的な除雪具(雪かき)。北海道には道南地方では近世、内陸部では明治期に伝わり、大正期頃まで使われていた。

ジョンバ

一本の木(主にブナ材)から製作されたヘラ状の北陸、東北地方で最も伝統的な除雪具(雪かき)。北海道には道南地方では近世、内陸部では明治期に伝わり、大正期頃まで使われていた。

木製雪押し

この雪押しは旭川地方の深名線の国鉄保線区で使用されていたものの推測模型である。

木製雪押し(雪箕)

雪押しの構造は、雪を入れる箱の部分と柄によって構成され、「雪押し」や「雪み」、「押しみ」と呼ばれていた。この道具の発生年代は明確ではなく、おそらく昭和20年代前半と想定されており、昭和40年代まで使われていた。主に北海道各地の国鉄の保線区で製作、使用されていた。この形状の雪箕は岩見沢保線区で使用されていたもので、北海道博物館に所蔵されているものの模型である。

スノーブル 小

新潟県上越市では、オギハラ工業の2代目の萩原一雄社長が1969年(昭和44年)に鉄製の雪押しの製造を開始し、71年(昭和46年)に底の平らにした「スノーブル」として販売、現在まで続いている。オギハラ工業では夏場に工事現場の一輪車を製造していたが、冬の仕事としてできることを模索していたときに一輪車と似た製造工程の鉄製のスノーダンプ製作を始めたとのこと。
色が緑なのも、当時緑の塗料が安価で一輪車と同じ製造ラインだったことが理由だと思われる。現在スノーブルは1日に1400台製造されている。

このスノーブルは柄が折れた後も支柱を中に入れ、ガムテープを巻いて使われ続けたものである。

スノーブル 大

スノーブルの大サイズ。現在は製造されていない。

吉鉄スノーダンプ

妙高市小出雲の吉鉄製作所が製造が手作りで製造していたスノーダンプで大、中、小サイズがある。雪の重い豪雪地帯で重宝されており、現在では北海道にも愛用者がいる。社長の吉村丘が体調不良を理由に、2017年12月に、長年ライバル関係であったオギハラ工業に商標や販売権、金型などを売却・譲渡し、現在はオギハラ工業が製造している。

クマ武

十日町新座の樋熊鉄工所の樋熊武氏が1980年代初頭に開発し、特許を取得したステンレス製のスノーダンプ。
樋熊氏はクマ武を完成させてまもなく他界してしまい、同じく十日町の山田屋商店が特許と製造のための機械や治具を引き継いだ。鉄製のものの2~3倍の値段がするが、ステンレス製なので軽くて錆びず十日町では絶大な人気を誇る。一日平均30台製造されている。

展示されているクマ武は、貴重な樋熊武氏製造のもの。本体裏に樋熊鉄工所のシールが貼られている。

クマ武(カスタム)

修理しながら10年使われていたクマ武。使用者がお亡くなりになり、息子さんから譲り受けた。滑りをよくするために赤く塗られ、雪が落ちないように板が取り付けられている。

スノーブル(アルミ)

軽くて錆びないアルミ製のスノーダンプとしてオギハラ工業では昭和50年代後半に販売が開始された。他にも柄もアルミの一体型のものもある。
一時期、さらにグレードの高いチタン製のスノーダンプも開発したが、コストが高く量産には向かなかった。

ママさんダンプ

昭和60年に新潟県の業者がプラスチック製のスノーダンプを「ママさんダンプ」として販売、特に雪の軽い北海道で定着した。

スノーダンプアイデアけいじばん

スノーダンプの新たな使い方や、遊び方などスノーダンプにまつわる自由なアイデアを募集中!アイデアシートに自由にかいてみよう!あなたのアイデアがラボで実現するかもしれません。

映像
クマ武製造工程、スノーブル製造工程、越後妻有の雪下ろしの風景

参考資料
北海道開拓記念館研究年報 第17号 1989年
北の生活文庫3 北海道の民具と職人 1996年
上越タウンジャーナル 2019年1月

協力
オギハラ工業 株式会社
山田屋商店
北海道博物館
新潟県立歴史博物館