TITLE: 海をつなげる Two seas connected
YEAR: 2019

Reborn-Art Festival2019

石巻の牡鹿半島桃浦に位置する旧荻浜小学校体育館に、北海道に漂着した北朝鮮木造船を組み替え、「漂着船の供養塔」を建立。供養塔の内部にはプロジェクターが安置されており、漂着した海の映像が投射されている。スクリーンは、桃浦港の防潮堤と同じ高さに設えてある。

海をつなげる

今回制作した供養塔の材になった北朝鮮の木造船は、北海道の小平町という小さな町に漂着したものだ。2018年だけで3隻もの船がこの小さな町に漂着した。2隻は処分したが1隻は町の判断で放置されていたものを部分的に運ばせてもらった。
2017年から日本海に漂着する船の数は急増し、2018年に日本海沿岸に漂着した北朝鮮は225隻となった。船には大体5人前後の漁民が乗っているらしい。そのほとんどが日本海に投げ出されてしまったということなのだろう。船は10mほどの船底が平の小さな木造船で、本来は近海で使うボートのような船である。それなのに何百隻もの船が無理して遠くの海、例えば日本の領海まで入ってイカなどを獲りにきた結果こんなにも多くの船が漂着することになってしまった。そのものすごい数の漂着船の基本的にほぼ全てが自治体によって廃棄物として解体処分されている。大金を使って全て壊すならば、船を残すことは考えられないのかなと僕は思った。今年の5月に、東日本大震災の時に流されてしまっていた石巻の漁船が高知県で見つかり、8年ぶりに持ち主のもとへと返ったらしい。漂着船でもかえってこられる船とそうでない船がある。その違いにも思いを巡らせた。
僕が北朝鮮の漂着船(大破したものだった)を初めて見たのは、2015年に奥能登の小さな川の河口だった。奥能登には何十年も前から時々漂着していたようだ。船体にタールが塗られており丈夫なので、昔は地元の人が便利に活用していたらしい。奥能登には寄神信仰が多く残っており、朝鮮半島から船で流れ着いた人が祀られていると伝えられている神社もある。昔は海から流れ着いたものは神だったが今は廃棄物としか扱われない。
日本海側ではこの船を扱うことはなかなか難しい。そのような経緯で石巻に一部ですが船を運んでみようと考えました。

本当は北朝鮮に返すのが一番だと思いつつ、日本海(のものやこと)を太平洋側の石巻に意識的につなげてみようという試みでもあります。

深澤孝史