unkozentai

TITLE: うんこふみふみたかふみ美術館

YEAR:
 2016
500m美術館vol.19 いつかきたみち、こどもみち

「うんこふみふみたかふみくん」は、僕の小学校1年生の時の活動ですが、振り返ってみると僕のはじめてのプロジェクトといえるかもしれないと思い、その名を冠にした美術館形式の作品を出品します。代表作の《うんこふみふみたかふみくん》を筆頭に、僕の関わりのある人の中から、自分が感じる心地よさや違和感を大切にしながら社会との接点を見出す小さな活動を紹介していきます。
《池谷くん》・・・自閉症の当時中学生と遊んだ映像記録の彼と遊んだ経験が今の僕に多大な影響を与えています。(出演:池谷和樹)
《プリウス》・・・一番好きな車です。これぞハイブリッドカー。(作:深澤孝史)
《人生ガンプラ》・・・ガンプラで自分の人生の碑をつくる活動。(詳細は人生ガンプラのウェブサイト)
《大庭さんのアイドル画》・・・浜松在住の大庭さんが描くアイドル画。(作:大庭潤司、村木多津男)
《酒井友章くんの家電工作》・・・コピー用紙と家電のカタログでつくられた大量の家電工作。(作:酒井友章)
《白畑家》・・・とてもおもしろい家族。(作:白畑 鑑浩(あきひろ)、天悠(たかはる)、伊織(いおり)、瑞織(みおり))
《田中保帆の仮歩道》・・・田中さんが撮りためている仮歩道の写真群。(作:田中保帆)

unkofumifumiうんこふみふみたかふみくん

僕が小学校1年生の頃の話。当時、道にはよく犬のうんこが落ちていて、踏みでもしたらクラスの中でちょっとした事件になった。しかし僕は、うんこはみんなが言うほど汚くないのではないかと思っていた。とくに道端に落ちている犬のうんこなんて乾燥したら土とそれほど変わらない。踏んだって問題無い。しかしそれがなかなか周りには伝わらない。遠足で学校の周辺をクラスのみんなで列になって歩くことになったときだ。これは好機だと思ったのか。「うんこふみふみたかふみくん」という僕の名前をもじった歌を作り、先頭にたって、歌いながら落ちているうんこを次々と踏んでいってみた。「うんこ」は大多数の小学生低学年がもっとも反応する言葉のひとつであり、みんな僕に習ってうたいはじめ、そのうちに合唱行進曲となった。しかしふと振り返ると肝心のうんこは誰も踏んでないことに気づいたのだった。

ikeya池谷くん

2008年から2010年にかけて僕は池谷和樹くんと毎週放課後に遊ぶ時間を持っていた。僕は当時、浜松市のNPO法人クリエイティブサポートレッツというところで働いており、障害者のためのアート教室のようなもののスタッフをしていた。そのアートの時間は、慣例で絵を描く時間みたいな雰囲気がもともとあったので、池谷くんもはじめの15分くらいは自分のノートをだして、「競艇」や「ドラゴンクエスト」「フジテレビ」など自分の好きな文字をひたすら書きなぐっていた。それが終わると毎回裸足になってから外に向かって走り出した。外にでると、毎回新たな遊びをみつけはじめる。食べられないさくらんぼを大量に口に含み、橋の上から川に向かって吐き出す。神社の土俵で上半身裸になって砂を浴びまくる。口に土を含み、泥にした後、畑の柵に使われていた、単管のなかに垂れ流す。高いところを探して登り新幹線を眺める。今でも、世界を五感で遊びたおす池谷くんのいる高みに憧れる。

puriusプリウス

僕は車の車種で最も好きなものを選べと言われたらプリウスと答えている。プリウスの一番の売りはもちろん燃費なのだろうが、それだけではない。一般的には未来を具現化している環境配慮型のエコカーに乗っているというステータスを手にいれるところも大きいだろう。
しかし僕は、プリウスの面白いところはエコカーと唱っているのにもかかわらず、よくよく考えると動力源が一つの車に二つも備えられているところだと思う。動力源を増やすことで部品が増えている気がするし、整備の際の手間もかわってくるだろう。
そもそもプリウスの指し示す未来は、電気自動車が走っている世界がイメージされている。しかし、もし電気自動車が普及されればそれは未来というよりは新たなインフラのもと単なる現実になっていくだろう。電気自動車自体には、未来を具現化しようという意思が備わっていないからだ。プリウスはガソリン車とモーターの二つの動力源があるからハイブリッドカーなのではない。ガソリン車に奇形的に電気モーターを付加させることで、既存のインフラの中で未来を見せている点においてプリウスは単なる自動車ではなくなっている。プリウス自体は未来の車でもなんでもないのに、くるかもしれない未来を想像させる「媒介物」となっている。未来の「媒介物」と現在の「実用品」という意味においてのハイブリッドカーなのである。

jinseigunpla人生ガンプラ

人生ガンプラとは、自分の人生のエピソードや理念をもとにガンプラを改造する活動であり、完成した立体物のことである。ガンプラとは、ガンダムのプラモデルの略だ。ガンダムは、よくあるヒーローもののような善と悪といった単純な構造ではなく、現実を想起させる政治や戦争、人間模様を描き、魅力的なキャラクターとロボットが登場することで、熱狂的なファンを多数獲得している。1979年放送開始以来、さまざまな世界観で多くのシリーズが未だにつくられており、その人気を支えているものの一つがガンプラでもある。僕は物心ついたころから兄の影響でガンプラを作り続けているが、家に飾るにはどうも自分との関係性が薄いし、インテリアにも馴染まないよなあ、ともやっと感じていた。
2011年よりとくいの銀行というプロジェクトを僕はおこなっている。2013年にとくいの銀行を山口市で展開していたときのことだ。とくいの銀行ではいくつものイベントを開催していたのだが、そうしたイベントを象徴するようにガンプラを改造した「とくいの銀行ガンダム」を常連の板井さんと上村さんがつくってくれた。それを見た僕は、プロジェクトのアーカイヴにこんな方法があるのかと目から鱗が落ちた。買ったガンプラを組み立てているだけだと、与えられた情報を受け続けるだけの不健康な状況のようにも感じていたが、多くの人々に共有されている壮大なガンダムの世界観と、自分たちの吹いたら飛びそうな小さな歴史とが結びつける活動はとても創造的な行為だと思い、その時なにか希望のようなものをガンプラにはじめて感じたのだった。

sakai1酒井友章くんの家電工作

僕は酒井くんとは数回会った程度でそれほど面識はないのだが、酒井友章くんが、先生として登場した「ぶっとびアート」には浜松に住んでいた頃、よくお手伝いで関わっていた。ぶっとびアートは、臨床心理士の笹田さんとワークショップコーディネーターの村松さんが運営する浜松の障害のある人やない人やその親の居場所づくりのプログラムで10年もの間月1回のペースで活動を続けいている。笹田さんは仕事がら、密かに面白い表現をしている人が身近にたくさんいるのだが、その中の一人である。今回の「いつかきたみち、こどもみち」という展覧会のタイトルを聞いた時、パッと酒井くんの家電が頭をよぎり、彼はこれを地でいままさに続けていると思い、出展を依頼した。以下酒井くんのお母さんからいただいた文章である。

酒井友章(15歳)静岡県浜松市在住
幼少の頃から家電製品が大好きで、店頭で商品を眺めたり、商品カタログを集めたりするほか、紙でテレビや洗濯機などをつくることが日々の楽しみ。特に冷蔵庫が好きで、新しい型番の冷蔵庫が発売されることをいつも心待ちにしている。

1点を制作するのに大体2時間を要する。紙で作られた冷蔵庫の庫内の作りは本物と同じで、適当な大きさに切った紙を貼り合わせて制作し、完成した作品は部屋に並べる。冷蔵庫など、本体の他、店にあるカタログを入れるためのラック、カタログ、プロモーション用モニター、発売前の大きさ見本の段ボールをイメージしたものも作り、隣り合わせる。

制作して間もない作品は、紙に張りがあり綺麗なのですが、まだ部屋に飾っておきたい、と手放さないため、今回出展する作品は、2013~2014年モデルの冷蔵庫、洗濯機となります。

ooba大庭さんのアイドル画

大庭潤司さんは1969年静岡県浜松市生まれ在住の自動車のクラッチ工場勤務の男性だ。2008年にひょんなことで出会った大庭さんに僕は絵を教えることになった。教えたといっても手取り足とり指導するわけではなく、道具の使い方など、基礎的なことを伝えたり、一緒に描いたりした程度だ。大庭さんのアイドル画は偶像というより寓意画である。都市や生命に対する愛憎や虚無感が、少し歪んだ形で表れ、組み合わされ描かれている。
大庭さんは仕事のとき以外は基本的に街をぶらぶらして遊びを探している気がする。大庭さんの遊びは範囲が広い。政治家のおっかけ、アイドルのおっかけ、いろんなお店に顔をだす、すぐに衝動買いをするなどなどだ。大庭さんがアイドルの絵を描き続ける目的が、銀座の画廊で年一回の個展(グループ展の形式をとっているが大庭さんがプロデュースしている)である。その画廊で個展をする理由も、大庭さんが関係している政治家の方と画廊がつながっているからだという。なので大庭さんはアイドル画を描いているのは政治目的なのだという。
大庭さんは、さらに村木さんというダジャレ活動家の方に絵を教えはじめた。今回は村木さんのダジャレ絵画も合わせてご覧ください。

shirahata白畑家

静岡県袋井市に住む白畑家とは2008年からの付き合いで、おもしろいものに対するアンテナが非常に高いお母さんの礼子さんと、4人の子どもたちが場に表れると確実にいつも事件が起こる。長男のあきひろは、自閉症で、ある時から急に図を描き始め、常人離れした記憶力で、様々な土地の鳥瞰図を描きまくる。次男のたかはるは、実質的な長男としてまとめ役をしながらも、それぞれの兄弟たちを誰よりも面白がる理解者でもある。本人も謎の四コマ漫画、キムラさんを描き続けている。
下の二人は双子で、男の子の方がいおり、女の子がみおりだ。はじめてあったころは赤ちゃんだったがいまでは小学校3年生だ。みおりはアイドル的な存在で、いおいりはやんちゃな存在だ。今回は彼らの作品群をいくつか紹介させていただく。

tanaka
田中保帆の仮歩道

田中さんは、僕がレッツををやめたあと、彼女が入社し、そこからたまに飲んだり、なにか僕が仕事があったら手伝ってもらったりといろいろお世話になっている。田中さんは現在は京都府の障害者芸術の推進事業に携わっており、「co-jin」というスペースの企画運営をおこなっている。彼女はレッツ時代から、それぞれの利用者の方々の個人の特性を尊重した関わりを重視しており、現在もそれに裏付けされた活動を丁寧におこなっている。
今回は、そうした彼女の障害のある方との関わりや企画ではなく、彼女が個人的に趣味で撮りためている「仮歩道」の写真を展示させてもらう。
前に一緒に歩いていた時に仮歩道を見つけ、静かに喜んで写真を撮っているのを見かけた。そのときはこういう仮設性のあるものが好きなのかな、わかるようなわからないような気持ちでそっとしておいた。
今回の展示にあたり、仮歩道の写真コレクションの意義を尋ねてみたところ、意義なんかねーよと返されつつも、仮設性から生まれる儚さもさることながら、工事のおじさんが、その辺にあるもので、各々の創意工夫でこしらえることで、通りにくくて萌えるとか、札幌の仮歩道はダイナミックでポイント高いとかそれぞれの人間味と場所性が滲み出るところが面白いのだという。